ABA/VB療育

ABAとVB
ABAとは、Applied Behavior Analysis(応用行動分析)の略称です。
B.F.スキナー博士が創始者とされるBehavior Analysis(行動分析学)という人を含む動物の行動に関する基本原理の科学的研究を基に発展しており、医療、福祉、教育、人材育成など幅広く用いられています。
つまり、人の行動に関する研究です。
VBとは、Verbal Behavior(言語行動)の略称です。
ABAの構築と発展に最も貢献したとされる、B.F.スキナー博士により提唱されました。
言語も行動として考える事で、マンド・音声模倣・模倣・タクト・イントラバーバル・視覚操作・受容の主に7つの機能(使う状況・使い方)に分類します。
つまり、言語分野の研究です。

真似(模倣)する
(音声)

質問に答える

思い浮かべて
(欲しい時に)

絵や写真を見て

真似(模倣)する
(サイン)

チョコという言語

言語は使い方をマスターする
ASDの人の多くが『チョコ』という言葉(言語)を知っているだけでは他者とのコミュニケーションにおいて状況に応じて使う(話す)事は非常に困難です。
例えば、目の前にある「チョコ」を見て「チョコ」と言う(発言する)事と、[会話]や[食べたいと思った時]に言う(伝える)事では言語を行動としてみなした時全く異なった「行動」となります。
※全ての状況で『チョコ』という同じ言語を使っていても過程は同じではない
つまり、話せない=言葉(言語)を理解していないのでは無く、使い方を理解できていないという事になります。
『チョコ』という言葉だけを練習する事や言語の種類だけを増やす事に意味はありません。使い方・使う状況とセットで増やす練習をする事でコミュニケーション能力が上達します。
そして、自閉スペクトラム症を含むコミュニケーションに課題のある子どもたちの療育法としてABA(行動分野)に
VB(言語分野)を取り入れる事で発展した療法がABA/VB療育です。
※ABA療育とは、ABA(行動分野の研究)を取り入れた療育法の総称として使用され、取り入れ方や使い方 などは各サービス提供者や企業により大きく異なります。

オーティネットのABA/VB療育
VBによる言語分析法(言語発達評価法VBMAPP等)を用いて、子どもにとって一番必要な言葉(使い方)から効率よく教えます。
また、VBの目指す療育では専門家だけでなく、ご家族などの身近な人から変わること、子どもへの関わり方を工夫することが最も重要だとされています。
オーティネットでは、ABA療育の中でもVBを用いたABA療育=ABA/VB療育で自閉スペクトラム症などのコミュニケーションに課題を抱えている、または、その可能性のある子ども達が社会で適応していくために必要不可欠なコミュニケーション力を身に付けるためのトレーニング(練習)を提供しています。
オーティネットのABA/VB療育では遊びを主軸にセラピーの内容が構築されており、遊び方や内容をセラピストがコントロールする事で言語(会話)や他者との関わり方(コミュニケー ション)のトレーニング(練習)の役割を果たします。
また、[VB=遊び]などのイメージから[VBにはDTT(机上課題)が無い]との誤解もありますが、VBでもDTT(机上課題)を取り入れたセラピーを実施しています。
●療育での役割と内容
コンサルタント(BCaBA)
・ご家族へのコンサルテーション(お子さまの行動分析)
・ABA/VBプログラムの作成
・セラピストへの指導(指示)
セラピスト
・専門的にプログラムを実施
ご家族(保護者)
・日常生活の中で無理なく可能な内容を実施
●サインを取り入れた療育

オーティネットではサイン(ジェスチャー)を使った療育を積極的に取り入れています。
サインとは、手話を参考として音声がまだ出ていないまたは音声言語でハッキリと伝える事ができない段階において個々の子どもに合わせて作るその子のために作られた、音声言語の代わりとなるコミュニケーション手段となります。
サインを使用する事で音声言語の表出が促進され、より効率的に習得に繋げる事が可能になります。
さらに、音声言語習得後は【長い・短い】のような形容詞などの比較概念を学ばせる方法としても効果があります。
[サインは難しい][サインを使うと音声言語が出なくなる]などの誤解もありますが、サインを用いた療育は音声言語に課題のある子ども達にとって大きな成長手段となり得ます。
ポイント
サインを使った療育では、周囲が焦らずに子どもの成長に合わせてゴールを目指す事が必要になります
●適切な行動を増やす
ABAで行動の修正を促して学習や社会性の妨げとなる行動を減らします。
しかし、子どもが自ら使える・使いたいと思うコミュニケーション方法を探して増やすことを中心に[不適切な行動をどのように減らすか]ではなく適切な行動をどのように増やせるかを最優先に取り組みます。
●ABA/VB療育の具体例
ABA/VB療育の主な特徴は子ども達が何を1番伝えたいかを分析し、それを効率的に子ども達に教えて、不適切な行動を無くす事でコミュニケーション力を高めます。
日々の暮らしや遊びを通じて練習しながら机上で他の言語分野(タクト・イントラバーバルなど)に取り組みます。
(1) マンド( 要求語など)を教える
好きなものが欲しい時→〇〇欲しいと言わせて(サイン)から渡す。
好きなことをして欲しい時→〇〇してと言わせて(サイン)からしてあげる。
これらを子どもが自発的に伝えられるようになるまで繰り返します。
つまり察しのよくない人になる事が必要です。
保護者の多くは、子どもの好みや欲しいもの(して欲しい事)を子どもがハッキリと伝えなくても分かってしまい
先々に与えてしまいがちですが、あえて分からないふりをする事で、 マンド(要求語など)を引き出す事を目的とします。
セラピーでは、子どもの要求などを把握しているからこそ、引き出したいマンドなどに誘導する事ができます。
具体的には、電車のおもちゃを欲しがっている時に「電車とって」と言わせて(サイン)から、すぐに1つか2つだけ渡し、もっと他のおもちゃを欲しくなったら再度言わせて(サイン)すぐに次を渡します。


このように、必要な手助け(プロンプト)を充分に素早く、実行する事で言語を使おうというモチベーションを上げることができます。
そして、練習を重ねていく中で段階的に手助けを減らして、子どもが自発的に要求などを伝えることができるようになります。
これは多くの研究で裏付けされた最も効率の良い方法とされおり、今子供たちが一番伝えたいこ とを引き出します。
(2) 遊びの発展
子ども達が興味を持っていることや遊びを基に、遊び方やその内容を広げたり、新しい遊びに興味を持つように工夫する事を通して他の子ども達の遊びに興味を示すようになり、最終的には参加する事を目的に練習します。
ボールなど体を使った遊び
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本読み、おもちゃなどの始まりと終わりのある 分かりやすい遊び
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工作やお絵かきなどのテーマに沿った複雑な遊び
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かくれんぼなどのルールのある遊び
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ストーリー展開のあるごっこ遊び
発展の例

セラピストなどがプロンプトして遊びを広げる
言語習得の時と同じで、遊びを広げていく時にも本人のモチベーションを徐々に高めながらスモールステップを重ねていくことが大切です。
(3) DTT、机上の課題
自発言語を一定数獲得したら、次は会話やコミュニケーションをさらに広げるため応答言語を教えていきます。
タクト(視覚について命名する)・イントラバーバル(質問に答える)・受容言語(指示に従う・こちらの伝えることを[理解]する)などが含まれます。
「今日どこ行ったの?」という一見単純そうな質問に答えるためには、「遊園地」という場所の命名(タクト)。
「どこ?」という質問に答える(イントラ)。
「今日」という時制を理解する受容のスキルが必要となります。
音声模倣 「遊園地」と正確な発音で繰り返す
模倣 「遊園地」サインを模倣する
タクト 写真や実際に訪れた時、「これどこ?」の質問に「遊園地」
(命名) と答える
イントラバーバル 「ジェットコースター乗るところどこ?」などの質問に
(会話) 「遊園地」と答える(遊園地は見えてない)
視覚操作 遊園地にあるライドの写真を分類する
受容 「遊園地どれ?」と聞かれて写真の中から選ぶ


(4) 不適切行動への対処
クレーン、かんしゃく、自傷・他傷、常同行動などの行動は子どもの学習や言語習得の妨げになり ます。
不適切行動は、一見同じに見えても目的が違う行動であることが多々あり、欲しいものを得るためのかんしゃくもあれば、指示されたことから逃れるためのかんしゃくもあります。
※対処法の一例(要求を伝えるためのかんしゃくの場合)
かんしゃくが起きる前→素早く適切な言葉を言わせて(プロンプト)すぐにそれをかなえる。
かんしゃくが起きてしまったら→静まるまで要求をかなえない(言語を使った要求との区別をはっきりとつけるため)
そのように同じに見える行動の目的を分析し、それに適した対処法をとることで、適切な行動(言語)が増え、不適切な行動は減ります。
綿密に作られた対処法を家族が実践できるトレーニングもオーティネットではご提供致します。